わたしたちはそれから地下牢へと戻った。

エマがとても幸せそうにシエルを抱いているのを眺めながら、わたしはカルロにわたしのママやおばあちゃまたちがみんな短命だったことや、わたしの血はいったいどうなっていくのか確かめようとしていた。

その瞬間。

携帯電話が鳴り響き、わたしは聞こうとしていた言葉を飲み込んだ。

着信を見るとパパからで、わたしは一気に現実に引き戻されながら電話に出た。

「花恋!今どこにいるんだ!?明後日はお前の誕生日なんだぞ。とにかく今夜お前に会わせたい人がいるんだ。その人はお前とぜひ婚約したいと言っている。今夜、パパのホテルまで来るんだ。いいな?花恋」

「パパ!わたしはまだ婚約するなんて……!それに今夜はどうしてもやりたいことがあるから、お願い明日まで待って!」

パパはそこで一つため息をつくと、

「…わかった。明日の晩、必ずパパのホテルに来るんだぞ。…花恋、婚約を無理強いはしたくない。だが、花恋も会えば必ず婚約してもいいと思う人をパパは選んだ。だから安心して帰ってきなさい」

そう言って電話を切った。

「…パパ」

わたしはどうしていいのかわからなくなって、いつの間にか涙を流していた。

エマはそれを見ると、わたしに近づいてきてわたしの頬の涙をそっと手で拭った。

「カレン。あなたには愛する人がいるの?」

愛する人、と言われてとっさに浮かんだのは……デュオだった。

でも……!

「…よく、わからないの。デュオはヴァンパイアで、こんなに好きだって思うのももしかしたらキスの刻印のせいなのかもしれない。彼に恋人がいるって思うだけで胸が張り裂けそうに痛いけど、でも、もっと彼のこと知りたいって思う自分もいて……」