「エマ様……」

カルロは今こそ泣くことができないヴァンパイアの自分を悔しがるような表情を見せると、

「涙を流すことはできませんが、私の心は幸福の涙でいっぱいです。エマ様、100年間、ただあなただけをお待ちしておりました」

そう言ってエイダをエマに差し出した。

嬉しそうに微笑んでいるように見えるエイダは、エマの頬にその頬をこすりつけ「にゃぁ」と鳴いた。

「エイダも待ち焦がれておりました」

エマとエイダがじゃれ合うのをカルロは嬉しそうに見つめる。

だが、エマはそこでふっと笑みを絶やすと、

「……眠りの中で、ウルフの声を聞きました。エマ、君をヴァンパイアにした私を許してくれ。……そして、勝手に別れを告げる私も、と。……ウルフは自分の寿命がわかっていた。そしてわたしとカルロを護るためにその命を散らした。わたしはずっと眠りながらも、彼のエナジーを探していました。でもこの100年、彼のエナジーを感じることはできなかった……」

そう言って、エイダを強く抱きしめた。

「…エマ様…」

「ウルフ…。『100年たってもキスしよう』って言っくれたあなたは、もう……いない…!」

エマは涙を零す代わりに、金糸の巻き毛をサラサラと零しながらエイダをさらに強く抱きしめた。

「エマ…!」

わたしがエマの震える肩を抱こうとしたその時。

エマは苦しげに顔を歪めると、エイダをその膝に置き、「……うぅ」と声を漏らした。

「エマ様!!」

駆け寄ったカルロの腕をエマは懇願するように握った。

「カルロ……!この子が……ウルフの子が産まれようとしている……!!」

「!?」

エマは白いドレスの上から子を抱きしめるように腕を回すと、苦しげな息を吐きながら、


―――愛しいウルフを目の前にするかのように、笑った。