わたしはまるでママに抱きしめられたように。

5歳のころのわたしに戻ると、子供のように泣きじゃくっていた。

「…ママ!」

カルロはいつものように、まるでそこに月が在るかのようにわたしたちを見つめながら、眠りから覚めたエイダとともに微笑んでいた。

そうして、ママのように優しく抱きしめてくれるエマの胸の中でわたしは15年分の涙を流した。




やっとわたしが泣きやんだ時。

エマはそっとその細く美しい指でわたしの涙をふき取ると、

「あなたは、エヴァにそっくりだわ」

と微笑んだ。

エヴァが誰なのかわからずにきょとんとしていたわたしに。

カルロは楽しげに微笑むと、

「エヴァ様はエマ様の最初のお子。エマ様が人間としてお産みになられた方で、ウルフ様が『エヴァ』と名づけられました」

そう言ってエイダの頭を撫でた。

そうか…エマがウルフに名づけてもらうと言っていたっけと思い出した。

『エヴァ』はエマが眠りについてウルフが地下牢を出る時に修道院に預けられ、ヴァンパイアとしての血を封印された娘。

「エヴァちゃん、か…」

わたしが呟くと、

「そう、そのエヴァ様にあなたはそっくりなのです」

と、カルロが微笑んだ。

「あれ?でもエヴァちゃんって確か赤ちゃんの時に別れてしまったんじゃ…」

急に沸いた疑問を不思議そうに呟いたわたしに、

「ええ。ですからカレンは赤ちゃんみたいに童顔なのですね」

と、カルロが子供に戻ったようにいたずらっぽい微笑みを投げかけた。

「……カルロ~!!」

思わずカルロにパンチをくらわすようなフリを見せたわたしに。

エマは楽しげにふっと噴出すと、

「カルロ、100年間よくわたしを見ていてくれました。ありがとう。わたしは眠りに落ちている中でも、あなたの存在を感じていました。どんなにかこの瞳を開けて、あなたの微笑みを見たかったことか…」

そう言って、カルロの手をとるとその甲にそっとキスをした。