だが、その強い術の影響か、本来ありえない異種間同士での混血である所以か、彼らの命はことごとく短命だった。

奇しくも眠りについたエマと同じ年頃の20歳になると彼らは病でその命を失っていった。

それが彼らの無意識下でメッセージとしてその子へと伝わり、20歳までに子を産むこと、それが彼らの使命となっていった。

ウルフガングはエマと再会させることを夢に見て、その子が必ず娘として生まれるよう術式をかけ、100年後産まれるだろう娘に「karen」と名づけるようメッセージを残した。

KAは古代エジプトの言葉で「無意識に感じるもう一人の自分」という意味を持ち、RENは「名前」という意味を持っていた。

「カレン」はその名で産まれるとともに、無意識にその祖であるエマを感じ、ヴァンパイアとして目覚めていくであろう、という願いをこめて。




そうして、1908年、4月。

エマとカルロのいる地下牢にも人間が押し寄せてくる気配を察知したウルフガングは、その地下牢を固く閉ざすと。

カルロに100年身を隠すことを指示し、エマとカルロを地中深くに封印する。

100年後その娘と再会させることを夢に見て……。

そしてウルフガングは、

その命の最期の灯火を燃やすように。

押し寄せる人間の荒波の中へと、その姿を消した。




4月のロンドンに、

奇跡の雪が舞い落ちる中。

踏みしめる雪に、その甘美なワルツと愛しいエマへの想いだけを残して………。