この頃、ヴァンパイアたちの支持を失っていたユーゴもいつの間にかその姿を消していた。

そして、この混乱の中。

ウルフガングの2人目の子を妊娠していたエマに、悲劇が起きる。

静かにその身を闇に隠しながらウルフガングの座を狙っていたオズワルドは、この混乱の期を逃すまいと、ウルフガングの最愛の妻であるエマにそのキスの刻印を刻んだ。

ウルフガングのキスの刻印を記されていたエマは、そのオズワルドよりも強いパワーによってその精神をコントロールされることだけは避けられた。

だが、エマは2つの強い刻印の力によって、その精神は錯乱状態に陥ることとなった。

この日、エマの精神は深い眠りにつき、そのお腹の子とともにエマのヴァンパイアとしての時は止まった。

ウルフガングはこのことをひどく嘆き、自らを責めた。

オズワルドは怒りに震えたウルフガングによって深手を負い人間との闘いに出ることもなくその姿を消す。

そしてウルフガングはその命の期限が迫っていることを知ると、エマとカルロをエマが暮らしていた修道院近くの地下牢へと避難させ、娘をその修道院へと預けた。

そして娘にはある封印の術式をかける決意をする。

人間とヴァンパイアの混血である娘が人間の世界でも幸福に暮らしていけるようウルフガングはその術に願いを込めた。

術のパワーが及ぶぎりぎりの100年後まで、その娘、そしてその子とまたその孫の代に及ぶまで、ヴァンパイアの血を封印すること。

それがウルフガングの願いだった。

その100年後に産まれるかもしれない自分の子孫はそのヴァンパイアの血を復活させるだろう。

恐らく、人間の体を持ちながらにしてその血だけを復活させるヴァンパイアが……。

ウルフガングはそのメッセージが徐々にその子孫に伝わるよう術をかけた。

彼らはその意識の奥深くでヴァンパイアである自分を感じながら、その祖であり母であるエマとの100年後の再会を願い子を産むことをその使命とするようになった。