ヴァンパイア†KISS

「ルシア……よく見ておけ。あれが、この世で最も甘美なワルツだ」

いつの間にかデュオの隣にきていたルシアは、そのワルツを食い入るように見つめると、

「……確かに、美しいわ」

そう言って兄の手を固く握った。

デュオはめずらしく殊勝なルシアを一瞬愛おしげに見つめる。

(ウルフ…まるで奇跡を見ているようだ)


「エマ様、ウルフ様。私はこのように幸せそうなお二人を見ることができて、これ以上に幸せなことはありません」

カルロは片隅から月のように見守っていた。

たった一人だった皇帝が、今は、最愛の人と踊っている。

その光景は、まるで奇跡のようだった。

人間とヴァンパイアとして出会った二人が、

今、十数年の時を経て、ヴァンパイアとして一つとなる。

それは光となり、渦となり、「ヴァンパイア・キス」全てを呑み込んでいった。



「ウルフ様、万歳!!エマ様、万歳!!」

「このガイアの皇帝と女王の誕生だ!!」

「お二人こそが、私たちを導く主だ!!」




二人はその歓声をまるで海の中にいるように遠くに聞いていた。

そこには、二人しかいなかった。

二人の愛しかそこには存在しなかった。