ヴァンパイア†KISS

その翌日。

エマは愛しい娘に乳を飲ませながら考えていた。

(この子はいったいどうなるのだろう…?人間とヴァンパイアの血をひくこの子は…!!)

何も自分の運命を知らない無垢な顔で母の乳を吸う我が子に、エマは切なさを感じていた。

その時、地下牢に降りてくる足音にエマは牢の外を見やった。

「エマ様、今、デュオ様から知らせがありました…」

いつもと違う暗い表情のカーラにエマは娘をベッドに降ろしながら首をかしげた。

「……お気を落とさずに。……ウルフ様がお亡くなりになりました」

「!?」

「エマ様には黙っていましたが、ウルフ様には心臓にキズがあり、ご自身もその命が長くないことはご存知でいらっしゃいました。……ほんとうに、残念です」

エマは気を失ってしまいたいほどの衝撃で胸を詰まらせながら、全身を震わせ言った。

「まさか……ウルフは死なないわ。ヴァンパイアなんだもの…!」

「いいえ、事実です。ウルフ様は死ぬ間際、これをエマ様に返されるようにおっしゃいました」

そう言ってカーラが差し出したのは……。

「……わたしの、クルス…!」

エマは震える手でそれを受け取り確認した。

カーラはエマにウルフガングの死を信じさせるために十字架を利用した。

彼女は以前に、エマがウルフガングに十字架をプレゼントしたとう話をエマから聞いていた。

そして、昨夜、眠るウルフガングの首から十字架を抜き取り、それを利用したのだ。


「ウ…ルフ……」

エマは朦朧とした意識の中、足を引きずるように地下牢を出る。

「あ……エマ様?どうされたんですか?」

隣の地下牢にいたカルロがきょとんとした顔で外に出て行くエマを見つめる中、カーラはエマの子を抱き上げるとその白い牙を零して微笑んだ。