ヴァンパイア†KISS

その頃、地下房ガイアにて。

密談を交わす二人の影があった。

「ウルフが倒れたというのか?」

「はい、心臓のキズによるものでしょう。捕らえようとしましたが、デュオたちの邪魔にあい取り逃がしました。しかし、ウルフが息絶えるのも時間の問題……」

「だが、ウルフは油断ならん。引き続き追え。そしてあの人間の女、妊娠していると言ったな?人間とヴァンパイアは姿は似ていても全く違う種族。妊娠など奇跡に等しい。今までにもそんな例はなかった。……面白い。オズワルド、その子供産ませてここへ連れてくるんだ!」

「……はい、ユーゴ」




そして、同じ頃。

ロンドン郊外のある錆びれた工場跡の地下にて。

「デュオ様……ウルフ様はこのままお目覚めにならないのでしょうか?」

ルドルフが心配げに死んだように動かないウルフを見つめる。

「ウルフは先ほどの戦いで力を使いすぎ心臓に負担をかけてしまった。恐らくヴァンパイアの強い生命力が働き、その寿命を延ばすために一時の休養に入ったのだ。その証拠に心臓は止まっているが、ヴァンパイアオーラは消えていない」

デュオはそう言うと、ここにいる唯一の女性ヴァンパイアであるカーラに目配せする。

「カーラ、ブルースにエマのいる地下牢の場所まで案内してもらえ。ウルフが今は行けないことを告げ、エマの身の回りの世話をしろ。無事に子が産まれるようにな」

「はい、デュオ様」

カーラが出て行ったあと、ルドルフは不思議な面持ちでデュオに問いかけた。

「ぶしつけな質問ですが、デュオ様……なぜウルフ様の恋人とは言っても人間である彼女にそこまでなさるのです?」

デュオはその質問に身動きもせずじっと佇むと、しばらくしてふっと微笑んだ。

「……私は、見たいのかもしれない。人間をこれほどまでに愛したヴァンパイアは他にない。今、ウルフは彼女を残して死ぬことを必死で拒んでいる。そうだ、私は、けして相容れぬ人間とヴァンパイアの恋の結末を見たいんだよ。……天邪鬼なもんでね」