ブルースは、再びウルフガングのワルツを見られることに興奮し、浮き足立った気持ちで曲を選び取る。

ワルツの名曲を次々と生み出すヨハン・シュトラウスによる晩年の名曲『皇帝円舞曲』。

壮麗、気品に満ちたその曲は、ウルフガングにぴったりなように思われた。

「作曲の才能、それだけは人間には叶わないな……」

ブルースの独り言とともに。

その名曲は「ヴァンパイア・キス」へと解き放たれた。




ワルツの始まりは、鳥のさえずりのように。


ウルフガングはまるで春の風の中にいるように、その気品ある銀髪をなびかせると。


麗しい視線で、目の前にいるはずの女性をホールドする。


ゆっくりと踏み出したステップは、徐々に軽やかに、優美な色を帯びて。


そのステップの軽やかさとともに、


ウルフガングの顔は、美しい気品を備えていった。






曲が荘厳さを増したその瞬間。





太陽のような「皇帝」が、ダンスホールに登場した。






宇宙(そら)にある太陽のように、生命を永遠に輝かせる皇帝は、






その終わりを惜しむように、最後のステップを踏むと、






太陽のような笑顔で愛しい人を振り返った。