朝の明るい日差しに深いまどろみから覚まされたわたしの頬には、涙が伝っていた。

「長い長い夢を見ていた…」

わたしはベッドから起き上がると、昨夜までと何も変わらない自分の部屋を見渡した。

「わたしは……カレンよね…?」

夢の中で、エマの意識に同調しまるで彼女の人生を生きているようだった。

10歳のエマがカルロに出会い、そしてきっとこのあと運命の人、ウルフに出会うだろう道筋。

あまりにもはっきりとした夢に、わたしは不思議な高揚を感じながらも、違和感は感じなかった。

今までもエマの人生を断片的に見てきたけれど、今朝のは今までにないはっきりとした現実感があった。

エマもカルロも、なんて美しいんだろう……!

人間はこんなにも美しく生きられるものだろうか。

悲しい運命に必死に立ち向かう小さな二人に、わたしは涙が止まらず嗚咽をもらした。

二人は、ウルフと出会ってどうなるの……?

ああ……二人に会えたら……!!



あのサラのお城での宴から1週間が過ぎていた。

サラはあのあとも変わらずブルースのことを聞いてきたりしたけど、わたしはブルースとはあれから会っていないと念を押し、デュオのことは決して言わなかった。

サラを通じて理事長にデュオのことが知れるのが怖かった。

理事長はデュオがヴァンパイアだと気づいたみたいだけど、とにかくこれ以上刺激を与えるのは避けなければと堅く決意していた。