レイモンド城は、見た目はボロボロの廃墟だが、中はきちんと僕が魔力できれいにしている。だからこそ、この広い空間に何かが欠けているように思えた。その思いは、日に日に大きくなっていく。

僕は、人間を襲う時以外は、城にこもって過ごすことがほとんどだ。しかし、今日は三日前に人を襲ったばかりだというのに外に出たくてしょうがない。

城の豪華な装飾が施された大きな窓から外を見ると、村の方からもうすぐ夜だというのに明かりが見えている。それに、何やら賑やかだ。

「……ちょっと行ってみるか」

この好奇心には勝てそうにない。それに、部屋に埋めるべきものも見つかる気がした。

僕は人間に変装し、暗くなり始めている空に向かって漆黒の羽を羽ばたかせた。



どうやら、今日は村の祭りの日らしい。何百年と生きていたけど、人間の祭りを見るのは初めてだ。

僕は、たまたまこの村にやって来た旅人のふりをしている。吸血鬼だとバレたら面倒なことしか起きないからね。