「……まだアイツのこと、好きなの?」

僕の問いに、愛しい人は表情で答える。そのヘーゼルカラーの両目には、僕の姿ではなくアイツが映し出されている。

もうこの世にいないアイツに僕は負けている。それが腹ただしくて僕は乱暴に言った。

「ねえ!無駄なんだよ?君は僕のものになる運命なんだよ!!君の足には枷が付いてるし、扉には鍵がついてるんだよ?絶対に逃げられない!アイツは助けに来ないんだよ!」

僕は愛しい人の体の上から退き、クローゼットの近くに立つ。その横には、真っ白なきれいなウェディングドレス。愛しい人のために用意したもの。

「このドレス、君のために用意したんだ。僕はお金にも、食事にも、君に不自由はさせないから!!」

僕はそう言って部屋を出る。愛しい人は、何も言ってこない。

愛しい人を監禁して、もう一年。僕らは何も変わっていない。ただのヴァンパイアと村娘だ。

それでも、彼女を放すつもりはない。放したところで、彼女に帰る家なんてどこにもないのだから…。