今日ケイがここに来たのは、エミリーを屋敷に連れて行くためだ。エミリーは首都にある教会で式を挙げる。今日が、エミリーと過ごす最後の日になる、そう誰もが思っている。

みんなの少し寂しげな顔から、エミリーがどれだけ多くの人に愛されているかがわかる。でも、エミリーは僕一人のものになるんだから寂しがってもしょうがないよ。

村の村長の家でケイが村長と話している間、エミリーは友人や男に囲まれていた。

「エミリー!結婚してもたまには帰ってきてよ」

「幸せになれよな!」

「結婚式に絶対行くわね!」

……馬鹿だなぁ。エミリーは僕と二人きりで式を挙げるのに。エミリーが愛を誓うのは神にじゃなくて、僕にだよ。

僕はそう言いたいのをぐっと堪えて、エミリーに色とりどりの花束を渡す。

「おめでとうございます。新生活は大変でしょうが、何かあったら連絡してきてください。必ず駆けつけます」

「ありがとうございます。こんな素敵な花束まで用意していただいて…。必ず、幸せになります!」