「クソッ!!」

レイモンド城で、僕は久しぶりに暴れた。美しい調度品は、壊しがいがある。物は、壊れるために存在するのだ。

皿も、鏡も、壺も、形のあった何もかもがバラバラになっている。そして、ただのゴミの山になった。

僕は、大きく息を吐く。エミリーのためにどれほどの時間とお金とやらを使ったのだろう。今まで紳士的に接してきたことが、全て水の泡となってしまった。

エミリーによると、ケイ・ローレンスはたまたまこの村に訪れた時にエミリーに一目ぼれをしたらしい。そこから猛アプローチをされ、付き合い始めたそうだ。

ケイは、この村から遠く離れた首都に住んでいる。たまにしか会えないが、二人の間には愛があるそうだ。

ケイが貧乏人なら、まだ奪える可能性はあった。しかし、ケイは貴族の息子。物書きの仕事をしながら、父の仕事を手伝っている。お金はたくさんあるのだ。

エミリーは、もうすぐ結婚して村を去るらしい。二人が結婚してしまったら、僕の出る幕などなくなってしまう。