「ですが………。」
 「大丈夫よ。あなたがいつもしているように読んでくれれば。見知らぬ人に声を掛けて、のど飴までくれる優しいあなたなら、気持ちは伝わると思うから。」


 おばあさんは、しずくの気持ちを理解してくれているようだった。
 それに、やはり困っているなら助けたい。そんな気持ちが勝っていた。子ども好きなしずくにとって、楽しみにしている子どもたちが悲しむ顔を見るのも辛いと思ったのだ。


 「わかりました。私でよければやらせてください。」
 「まぁ、本当に?ありがとう、お嬢さん。」


 満面の笑みで喜ぶおばあさんを見て、しずくの心もほんわかとしたものになった。
 
 白がこの図書館に来るまで、まだ時間もあるはずだ。
 しずくは、読み聞かせのために、数冊の絵本を準備して、もうすぐ始まる読み聞かせ会に備えたのだった。  


 しずくは、キッズスペースをちらりと見ると、赤ちゃんから就学前の幼児まで様々な子どもとその保護者が集まっていた。
 15人ぐらいだろうか。いつも見ている子どもの人数より少なくてしずくはホッとしながらも、始まる少しの時間もそのスペースにお邪魔していた。
 少しでも子どもと関わり、どんな子どもが来ていて、どんな絵本がいいのか。そんな事を考えながら接していた。
 おばあさんも一緒についてきてくれており、子だちに囲まれて、華麗にお手玉を見せていた。沢山の子ども達に囲まれて、とても楽しそうに微笑んでいた。その様子を見て、しずくは緊張していた気持ちが少し落ち着き、穏やかな気分になる事が出来た。