2話「読み聞かせ会」



 しずくは、そのおばあさんに言われたことの意味がわからず、返事に困ってしまっていた。
 すると、咳をしながらおばあさんは「ごめんなさい。説明もしないとわからないわよね。」と言ってから近くの児童図書コーナーへしずくを案内してくれた。

 そこには、それほど高くない棚と、絵本や児童向け文学書などが並んでいるエリアで、一角には、靴を脱いで入るキッツスペースがあった。

 そこには柔らかいクッションやお人形、そして絵本が置いてあり、子ども達がくつろぎながら自由に本を読める空間になっていた。数人の子ども達が絵本を読みながら、静かに過ごしていた。

 そこの一角にそのおばあさんが座り、「どうぞ、座って。」と、隣に座るよう促された。
 しずくは、隣に座っておばあさんに質問をした。


 「絵本を読んで欲しいとは、どういう事ですか?」
 「実はね、ここで週2回行われている、絵本の読み聞かせ会というのがあってね。それを私が長い間やらせてもらってるんだけど……この声でしょ?今日はお休みしようと思ってたんだけど、毎回楽しみにしてくれる子どもも多くて。」
 「読み聞かせ会………。」
 「そうなの。だから代わりの人を探していたの。それで、見つけたのがあなた………どうかしら。やっていただけない?」


 おばあさんの頼みに、しずくは迷ってしまった。
 確かにおばあさんは困っているし、読み聞かせ会を楽しみにしている子どももいるだろう。
 けれど、保育士をしているからと言って、絵本を読むのが上手かは、わからなかった。
 しずくなりに、子どもに読み聞かせをする時に気をつけている事はあったし、絵本のこだわりもあった。
 けれど、長年読み聞かせをしていたおばあさんのように上手なはずはないと思ったのだ。
 
 絵本を読んでも楽しませる事が出来なかったらどうしようか。おばあさんの期待に答えられるものが出来なかったらどうしよう。
 そんな事で悩んでしまっていた。