「お姉さんは、白先輩の仕事の事何もわからないから、仕方がないですよね。すみません、余計な事言ってしまって。」
 「………ううん。教えてくれて、ありがとう。」


 しずくは、精一杯の強がりで心花に微笑んで返事をした。けれど、自分でもわかっていた。全然笑えてないという事が。

 「じゃあ……。」と、言って心花から離れようとした時だった。


 「お姉さんっ!」
 「…………え?」


 振り返り際に、心花に呼び止められた。
 まだ何か話があるのだろうか。彼女を見ると、心花は自分の左手を指差して、「ここ。」と言っている。何の事かわからずに、首を傾げる。


 「お姉さんのここ。絵の具、付いてますよ。」
 「えっ………。」


 慌てて、自分の左手の小指の下を見ると水色の絵の具が、塗られていたのだ。残業で作り者をしていた時に誤ってついてしまったのだろう。気づかずに、ここまでつけてきてしまったのだ。


 「お仕事、大変ですね。それでは………。」


 心花はそう言うと、フフッと笑いながらしずくを見た後、颯爽と去って行った。