仕事が進んでいないとは聞いていたが、絵が描けなくなっているというのは初めて聞いた話だった。しずくは、驚いてしまい、彼女に逆に聞き返してしまう。
 すると、心花は「知らないんですか?」と、怪訝そうな顔でこちらを見た。その言葉に、しずくはドキッとしてしまう。

 恋人であるしずくよりも、大学の後輩の方が今の白の状態に詳しいのだ。しずくは、何故彼女が知っているのかわからなかったけれど、恋人として、恥ずかしくなってしまう。

 気まずくなり、つい彼女から視線を逸らすと、心花は面白くなかったのか、笑みを浮かべながらしずくの方に近づいてきた。


 「もしかして、お姉さん………彼女なのに白先輩の仕事に興味ないんですか?」
 「そ、そんな事ないよっ!」


 挑発するような言葉に、つい強い口調で返事をしてしまう。そして、心花と目が合う。
 すると、彼女はますます顔をニヤつかせた。


 「じゃあ、白先輩がインタビューをどうしようかって悩んでた事は知ってるんですよね?」
 「え…………。」
 「それも知らないんですか?………白先輩、お姉さんには何も話さないんですね。」



 インタビュー。
 悩んでいる。
 スランプ。

 全て知らない事ばかりだった。
 そして、心花の言葉は、しずくにとって頭を殴られるぐらいの衝撃だった。白は、私に何も相談しない。
 それは、仕事では役に立たないから?話しても仕方がないから。
 ………違う。白はきっと、心配をかけないために何も話さない。そんなのはわかりきってる事。

 それなのに、しずくは悲しくて虚しくて、頭がくらくらした。