「すみません。今までも顔出しはNGにさせてもらったんです。顔なしでしたら写真は可能ですが………。」
 『そうなんですか!?それは勿体ないっ!きっと写真を見てファンになってくれる人も増えるだろうなってぐらいイケメンなのに。』
 「………そんな事は。」
 『インタビューはまだ先なので、少し考えて見てください。では、デザインの方と一緒に、よろしくお願いします。』
 「え、ちょっ…………切れてる。」


 担当の男は強引に自分の希望を押しつけたままブチッと通話を切ってしまう。
 白は小さく息を吐いて、スマホを作業机に置いた。


 「写真か………。それだけは、なるべく避けたいな。……どうやって断るか………。はぁー、また、厄介な事が増えちゃったな。」


 髪をくしゃくしゃにかきながら、白は作業台にある時計を見つめた。もう少しで正午になるという時間帯。今日は、平日なのでしずくは仕事中だな、と白は思った。

 1度連絡をしなくなってから、何となく気まずくなり、その後から彼女に電話もメッセージも送っていなかった。しずくも行事で忙しいのだろう、彼女からの連絡もなかった。それだけで、彼女との繋がりがなくなったわけでもないのに、白は妙に寂しくなってしまっていた。
 それでも、自分から連絡する事も出来なかった。今会っても、仕事の事が頭にあり、彼女と共に笑える自信がなかった。


 「はぁー………行きたくないけど、行くしかないかな。」


 作業がはかどらなく、どうしていいのかわからなかった。煮詰まる事など何度もあったが、ここまで酷いのは初めてで、白自身もどうしていいのかわからなかった。
 そのため、白は今日は家で作業はせずに、ある所に向かおうと思っていた。
 気は進まないが、白は外出の準備をし、車を走らせたのだった。