「……とにかく!光哉くんは、どう思う。白くんの気持ち………。」
 「それは本人しかわからないって事だと思うけど…………。あいつ、今忙しいんだよね?」
 「うん。仕事が立て込んでるみたいで………。」
 「だったら、そのせいだと思う。忙しかったり、仕事で上手くいかなかったりして、気が立ってるんだろ。あいつだって、社会人になったばかりだし。まだまだ、慣れない仕事も多くて焦る時期だと思う………。今は、彼女に構っている余裕がないだけだと思うけどな、俺は。」
 「……………。」



 光哉の言葉を聞いて、しずくはハッとした。
 しっかりもので、絵本作家として成功している白。けれど、彼は社会人になって間もない新人なのだ。それで大きな仕事を貰い必死になっているのだろう。
 上手くいかない事も多いのかもしれない。白が話してくれないので、わからないけれど、光哉が言っていた事に当てはまるような気がした。
 どんなに優しくて、落ち着いている白でも、余裕がない日だってあるだろう。しずく自身もイライラしてしまい、子どもに対して怒ってしまう事もある。

 社会人の先輩としても彼を支えないといけない。
 しずくは、そう思った。


 「ねぇ、しずく。白くんは、しずくとそういう関係になったから、捨てるような男の人ではないと思うよ。」
 「うん……わかってるよ。わかってるんだけど………少し不安になっちゃったの。でも、2人に話しを聞いてわかったような気がするよ。」
 「そう………。」


 不安そうに語り掛けてきた美冬だったが、しずくの言葉を聞いて、安心したように微笑んでくれた。


 「ありがとう。美冬、光哉くん。少し見守っていこうと思う。」


 今、白は頑張り時なのかもしれない。
 しずくは、サポートしつつ強い気持ちで応援しようと決めた。


 「何かあったらまた相談してね。」
 「うん。助かるよ。」
 「………雨ちゃんをそんなに心配させるやつなんて別れればいいのに……。」
 「光哉くん………。」
 「もう!だから、光哉はいつまでたっても彼女が出来ないのよ!」


 また、2人のいつもの言い合いが始まった。
 それをしずくは微笑みながら見つめていた。
 この2人に相談してよかった。そんな事を思いながら。



 そんな、少しだけ心が晴れた日だったけれど、その日から毎日来ていた連絡が途絶えたのだった。