10話「焦燥」




 
 「で、結局泊まったの?抱いてもらえたの?」
 

 ここは小さな焼き鳥屋。
 目の前に座りビールを飲みながら片手には焼き鳥を持っているのは、親友の美冬だ。
 周りにも人が居るというのに、普通の音量でそんな事を話し始めたため、しずくは慌てて「ちょっと、美冬!声が大きいよっ!」と、それ以上恥ずかしいことは言わないようにと止めた。
 「誰も聞いてないわよ。」などと、冷静に返事をしながらも、しつこく「で、どうなの?」と聞いてくる美冬に、しずくは小さくため息をついた。



 白の家に行ってから、数日後。
 しずくは、1人で悩んでいたが自分だけでは何も解決にならないと思い、美冬に相談する事にしたのだ。
 美冬は恋愛経験も豊富だ。きっと、男の人の気持ちをしずくよりは知っているだろうと思ったのだ。
 白の表情が気になり、しずくは悩んでいたがその事をうまく伝えるのは難しいようだった。



 「………白くんの家には泊まったよ。それに、優しくしてもらった。」
 「なんだ、良かったじゃんっ!」
 「…………そうなんだけど。そうじゃないって言うか。」
 

 しずくは、自分の気持ちを確かめるように、ゆっくりと話しをした。


 「その……初めてした時は白くんはその………喜んでくれたし、幸せそうにしてくれてるのが伝わってきて。私と同じなんだなって感じて嬉しかったの。………でも、昨日はたぶん私には本当は家に来て欲しくなかったんだと思う。それに泊まる事も、エッチするのをイヤだったのかなって。」
 「………そういう事か。」


 美冬は、しずくの話を聞くと、先程の少しふざけた様子から一転して、冷静な表情に変わった。