ドアを開けてくれた白に促されるように部屋に入る。彼の目の前をただ歩くだけなのに、彼に聞こえてしまうのではないかと思うぐらいに鼓動が強く鳴っていた。
 真っ暗な部屋で何も見えず、しずくはその場で白を待っていると、パタンッとドアが閉まってしまった。視界が真っ暗になり戸惑っていたが、すぐに体を引っ張られて、全身が温かくなるのを感じた。
 白に抱き締められている。

 それを感じ、しずくは体を固まらせてしまう。けれど、白の力は緩む事はなかった。
 強く抱き締められたまま、しずくは白の鼓動に耳を傾けた。すると、しずくと同じように速い速度でトクトクッと鳴っていたのだ。それを聞いた瞬間、しずくは体から力が抜けていくのがわかった。
 白の胸にそっと頭を寄せて彼に寄り添うと、白の体がゆっくりと動いた。
 そして、片手で顎を優しく引き寄せられて、そのまま深いキスを落とされる。何度も何度も。
 
 目が暗闇に慣れてきて、ぼんやりと彼の綺麗な髪や瞳が見える。熱を帯びてきた瞳で、しずくは、キスを与えてくれる彼を、目を細めながら見つめていた。
 すると、視線に気づいた白は、小さく口づけをした後に、今度は額同士をくっ付けて、余裕がない様子でしずくを見つめた。


 「すみません………。」
 「白くん………?」
 「本当は、ホテルに着いたらレストランで食事したり、部屋から夜景とか見たりしたかったんですけど………。我慢出来なくなりました。」