そこは街から離れた所にある静かなホテルだった。とても高いビルで、こんなところに豪華なホテルがある事にしずくは驚いた。
 エントランスも広く、シックな印象のホテルだった。しかし、その中にもたくさんの草花が飾られていたり、大きめのソファに吹き抜け中庭など、ゆったりできるスペースも数多くあった。

 初めて訪れるホテルに、しずくはキョロキョロしながらエントランスを眺めていた。
 その間、白はチェックインを済ませたのか、手にはカードキーがあった。


 「お待たせしました。行きましょうか。そのエレベータで行けるみたいです。」


 エントランスの奥にあるエレベーターを指させて教えてくれて白は、少し前を歩いて誘導してくれた。
 しずくは、彼の背中を直視できずに下を向きながらゆっくりと白の後ろを歩いていた。


 エレベーターでは2人きりだった。
 白は、「最上階の下にはレストランがあるんですよ。しずくさん、お腹空いてますよね?地」、「下にはバーもあるみたいです。」などと話しを掛けてくれて。
 しずくも「そうだね。行ってみたいね。」と、微笑みながら返事をしてはみたが、きっとぎこちない笑顔と言葉になっていただろうと、しずくは自分自身で気づいていた。


 エレベータはどんどん上に行き、最上階付近で止まった。
 ポンッという音と共にドアが開く。すると、静かな廊下が見える。部屋数が少ないのく、見えるドアも数個しかなかった。白の少し後を歩き、真ん中の部屋の前で白がカードキーをかざした。