「………しずくさん、着きましたよ。」
 「………え………私、寝ちゃってたの?」
 「はい。やっぱり疲れてたんですね。気持ち良さそうにぐっすりでしたよ。」
 

 白の呼び起こされ、しずくはしばらくぼーっとした後、自分が助手席に座っているのを見て、ハッとした。


 「ご、ごめんなさいっ!デート中なのに寝ちゃうなんてっ!」

 
 慌てて飛び起きて白に謝罪すると、白は笑いながら「いいんですよ。安心してくれてるって事ですから。」と、にっこりと笑ってくれた。

 気持ちを落ち着かせるためだったのに、本当に寝てしまったようだ。
 白の運転が心地よくて、ついウトウトしてしまったのだろう。デート中に寝てしまうなんて最低だな、と反省しながらしずくは、「ごめんなさい。」と、繰り返し謝った。


 「目的地に到着したので、外に出ましょう。寒くなってるみたいなので、しっかり上着着てくださいね。」
 「うん………ここって………どこだろう?」
 「もう少しでわかりますよ。しずくさんに喜んでもらえると嬉しいです。」

 
 白はとても楽しそうに笑い、車のドアを開けた。しずくも同じようにドアを開けると、そこから冷たい風は車内に入り込んできた。まだ夕方だったけれど、冬の空気を感じた。


 「行きましょう、しずくさん。」

 
 反対側からやって来た白は、しずくに向かって右手を差し出した。しずくは彼の手を取って、ゆっくりと助手席から降りた。