5話「Yes」



 白は普段通りに話しをしながら、運転を続けていた。
 しずくもいつものように会話を楽しんでいたけれど、内心ではドキドキしていた。
 今日は白がデートプランを考えてくれているようで、行き先を聞いても「内緒です。」と言われてしまったのだ。それぐらい、自分のために考えてくれているのだとわかり、しずくも嬉しくもあり、緊張してしまっていた。



 デートプランをしっかりと考えてエスコートする。
 それは、初めて白の家に泊まった時の事を思い出してしまう言葉。
 白が自分に手を出してこないのは、魅力がないからなのかと悩んで泣いてしまった時。白は「自分がエスコート出来るようになったら。」と言ったのだ。それを白が忘れているはずもない。きっと、いろんな事を考えてくれている。
 きっと………。

 そんな事を考えてはしずくは、緊張してしまうのだ。


 「しずくさん、休憩しますか?」
 「………。」
 「しずくさん?」
 「あ、え………どうしたの、白くん。」

 
 何度か声を掛けられても気づかず、しずくは慌てて返事を返した。
 その様子を見て、白は心配そうにしていた。


 「もう少しで着きます。遠距離になってしまって、すみません。疲れましたよね。」
 「ううん。そんな事ないよ。私こそボーッとしちゃってごめんね。」
 「いえ。良かったら着くまで休んでいてください。着いたら起こします。」
 「ありがとう、白くん。」


 白の優しさに甘えて、しずくはゆっくりと目を閉じた。
 疲れているわけでも、眠いわけでもない。
 目を閉じて、頭を休めて、落ち着かせなければいけない。
 そう思って、しずくは白に心の中で謝りながら、思考を止めるべく小さく息を吐いた。