4話「我慢の限界」




 「白ちゃん、こんなに立派になって。可愛いとは思ってたけど、こんなに男前になるなんて!」
 「菫さんも変わらずお元気そうですね。………あ、でも声が痛々しいですが………。」
 「そうなのよ、風邪がなかなか治らなくてね。だから、このお嬢さんにお願い事を頼んだのよ。まさか、白ちゃんの知り合いだなんて。」


 白と、彼に「菫さん」と呼ばれるおばあさんは、久しぶりの再会を喜びながら話しをしている。やはり、2人は古くからの知り合いなのだとわかった。


 「しずくさん、こちらは菫さんと言って、僕が小さい頃によくこの図書館に来ていたときにいろいろ話しを聞いてくれた方なんです。昔から読み聞かせ会のボランティアをしてくれているんです。」
 「そうなの。白ちゃんが小学生ぐらいの頃からのお友達なの。こんなおばあちゃんにも、白ちゃんは優しくて、とてもイイ子だったのよ。しかも、女の子にモテモテで可愛いお顔をしていてね。」
 「………菫さん、その話しはしなくていいですよ………。」
 「だから、白ちゃん、なんですか?」
 「そうなの!」
 「………しずくさんまで……。」


 恥ずかしそうにしながら菫の話しを止めようとする白だが、女子トークはそんな事では止まるはずもなかった。


 「白くんは、どんな子だったんですか?」
 「この図書館の閉館時間までずっとここで勉強しているか、スケッチをしている子どもだったわ。友達といるより、ここでずっと机に向かってた。……でも、それがとても楽しそうだったの。」


 それを聞いて、しずくは白と会って思い出した出会ったばかりの白の姿。
 誰とも仲良くしようとせずに、がむしゃらに夢に向かって頑張っていたけれど、少し苦しそうで、寂しそうな瞳をしている白。そんな彼は、小さな時からそうだったのだと、しずくは初めて知った。