週末。

俺は爽子と少し遠出をすることにした。
東京から車で2時間ほどのところにある美術館。
以前から爽子が行きたがっていたところだ。

「うわー、素敵」
１００年以上前に描かれた絵画を前に、ピタリと足を止める。

芸術に無頓着な俺には色彩豊かで手の込んだ油絵だなとしか思えないが、爽子は吸い込まれるように見入っている。

「そんなに好きなの？」
「ええ、初めてみたとき、息が止まりそうになったの」
「そんなに？」
「うん。この絵のモデルは初恋の女性。仕えていた家の奥様で、すでに人妻。叶わない恋をして、その思いを絵にしたんですって」
「へえー」

１００年前の叶わぬ恋。
女子が好きそうな話だな。


結局、１時間ほどで回れる予定の美術館を３時間もかけて回った俺たち。
出て頃にはすでにお昼を回っていた。