「ところで、一颯と知り合いなの？」
「えっ」
忘れた頃の不意打ちに、言葉が出ない。

「いや、さっき２人で話しているように見えたから」

やはり、見られていたんだ。
でも、話すわけにはいかない。

「さっき、ぶつかりそうになったんです。謝っているときに泰介さんに声をかけられて・・・」
「ふーん」
それ以上は聞かれなかった。

「ところで、来週の日曜って暇ですか？」
なんとか話の矛先を変えようと、話しかけた。

「今のところ仕事は入っていないけれど」
「じゃあ、うちのホテルに来ませんか？」
「うちのホテルって・・・」
「ああ。私が勤めているホテルのサマーパーティーなんです。ファッションショーみたいなイベントがあって、私も少しピアノを弾くんです」
「へー」
「バージンロードに見立てた舞台の上を、ウエディングドレスを着たモデルさんが歩くんです。その時、私が生でピアノを弾きます」
「すごいじゃない」
本当に驚いている様子の泰介さん。

「是非来てください。ゲストにモデルのナツキも来ますよ」
「えっ」

ん？
あれ、泰介さんの表情が変わった。