用意されたのは庭のよく見える明るい席。
ちょうどバラが綺麗に咲いていて、
「素敵なお庭ですね」
つい口にした。
「そうだね。ここにはよく来るのに、初めて見た」
初めて?
「そう言えば、どうして席を替わったんですか?」
「ああ、あの席はいつも俺が使っている席だから」
いつも使ってる席?
意味がわからず、首をかしげた。
「うーん、あんまり仕事の話をするの好きじゃないんだけれど。実は、商談用に使っている席なんだ」
「商談?」
「ああ。あの席は店の奥の方にあって用のある時以外店員も近づいて来ないし、他の客も通らないだろ」
「ええ確かに」
その先に席がない以上、誰の通路にもならない。
「それに、この店は照明も少し暗めだしね。俺が壁を背に座り、相手を通路側に座らせれば大抵はうまくいくんだ」
ん?
どうして?
「考えてもごらんよ。相手からすれば、ほどよく照明の落とされた店内で、目に入ってくるのは壁を背に座る俺だけ。他に目にする物もないし、意識をそがれる通行人もいない。そうなれば俺の話を聞くしかないだろう?」
「はあー」
なるほど。
「ビジネスなんて、興味を持ってもらって話を聞いてもらうことができなければどうしようもないからね」
「ふーん」
仕事の顔の泰介さん、初めて見た。
ちょうどバラが綺麗に咲いていて、
「素敵なお庭ですね」
つい口にした。
「そうだね。ここにはよく来るのに、初めて見た」
初めて?
「そう言えば、どうして席を替わったんですか?」
「ああ、あの席はいつも俺が使っている席だから」
いつも使ってる席?
意味がわからず、首をかしげた。
「うーん、あんまり仕事の話をするの好きじゃないんだけれど。実は、商談用に使っている席なんだ」
「商談?」
「ああ。あの席は店の奥の方にあって用のある時以外店員も近づいて来ないし、他の客も通らないだろ」
「ええ確かに」
その先に席がない以上、誰の通路にもならない。
「それに、この店は照明も少し暗めだしね。俺が壁を背に座り、相手を通路側に座らせれば大抵はうまくいくんだ」
ん?
どうして?
「考えてもごらんよ。相手からすれば、ほどよく照明の落とされた店内で、目に入ってくるのは壁を背に座る俺だけ。他に目にする物もないし、意識をそがれる通行人もいない。そうなれば俺の話を聞くしかないだろう?」
「はあー」
なるほど。
「ビジネスなんて、興味を持ってもらって話を聞いてもらうことができなければどうしようもないからね」
「ふーん」
仕事の顔の泰介さん、初めて見た。



