動揺しまくった私の態度も、泰介さんに気づかれることはなかった。

「お腹すいたね」
「そうですね」

結局、向かうことにしたのはイタリアン店。

「時々、仕事でも使うんだ」
泰介さんのオススメで、味が良くて落ち着いた雰囲気が魅力だという店に決めた。


「街中とは思えないですね」
近いからと徒歩で10分ほどの距離を歩き、目の前に小さな店が見えてきた。

街中、それも都心のビジネス街の外れにあるにしては、木々に覆われた緑深い場所。
ここがレストランとはいい意味で期待を裏切ってくれる。


「いらっしゃいませ、田島様」
すぐに出迎えられ、私たちは店の奥に案内された。

すると、
「あの、支配人。今日は仕事ではないので」
泰介さんが言うと、
「ああ、これは失礼しました」
支配人と呼ばれた男性は申し訳なさそうに頭を下げ、窓際の席に変更してくれた。