勧められるまま、カクテルを4.5杯飲んだ。
かなり気持ちよくなって、そろそろやめておかないとと自分でも思った頃、

「きっといいところのお嬢さんなんだろうけれど、こんな風に知らない男について行ってお酒を飲むって危険なことだって自覚があるの?」

え?

「誘っておいて言える台詞じゃないけれど、君があまりにも無防備だから」
まるで兄さんみたいな説教口調。

「いいんです。私なんてどうなっても」
投げやりに返してしまった。

「はぁ?」
呆れてる。

「私なんて何もないんです。あるのは親のお金だけ。それを取ったら存在価値がないそうです」
先輩の言葉を思い出して、また涙が出てきた。

「ふーん。まぁ、わからなくもないけれどね。親が金持ちだって事は羨ましがられることばかりじゃないからさ。それで、どうしたいの?」
「どう?」
聞き返して顔を上げると、ジーッと見つめられていた。

「正直言うと、俺も仕事でちょっとつまずいてね。1人でいたくない気分なんだ」
「それって・・・」
「誘ってる。君が嫌じゃなければだけれど」

もちろん躊躇いはあった。
初めてをこんな風に迎えるのは良くないと分かってもいる。
でも、

「いいですよ」
アルコールも手伝って、私は男性の誘いに応じることにした。