「店を出たら『私がご馳走したかったのに』って、急に怒り出して」

あー、なんとなく記憶がある。

「俺の手を振り払って、1人で歩き出した。それも千鳥足でね」

千鳥足って・・・

「そのうち若い子の集団に捕まって、ナンパされそうになったところを助け出して、タクシーで自宅に送り届けた」

はぁー。
「ご迷惑かけました」
ちゃんと頭を下げてみた。

「本当だよ。大体、油断しすぎ。居酒屋でも気安く店員に話しかけるし、弱いくせに記憶がなくなるまで飲むし、タクシーの中で眠ったらどこへ連れて行かれても文句言えないんだぞ」
なんだかとても説教モード。
「すみません」

「当分の間、酒は禁止。いいね」
「はい」
ん?

「また会っていただけるんですか?」
「嫌なの?」
「いいえ。でも、ひどい姿を見せてしまったから」
きっともう愛想を尽かされたと思っていた。