私が家の車で来たことを気にしている様子の田島さんに
「運転手付きの車で出歩く私が、お嫌いですか?」
直球を投げてみた。

一瞬の間があって、
「そんなことはありません」
きっぱりと否定された。

「良かった。嫌われるんじゃないかと内心ヒヤヒヤでした」
と笑って見せる。

「そのことに囚われているのは、あなた自身ではないですか?」
えっ。
言葉を失った。

「生意気なことを言うようですが、服も靴もバックも、お金だっていつ失うかなんてわからないんです、結局残るのは自分自身だけですよ」
感慨深そうに話す田島さん。

決してお金持ちを自慢したつもりはない。
むしろその逆のつもりだった。
でもわざわざ口に出すこと自体、私の中におごりがあるのかも。

そういえば、田島さんは自分で起業した会社を経営しているんだとおじさまが言っていた。
きっと色んな苦労をしてきたのね。
だからこそ言葉。

私は急に恥ずかしくなった。

「ごめんなさい。変なことを言ってしまいました」
自分でもウルッとしているのがわかる。
泣かないぞと瞬きを我慢する私を、田島さんが何も言わず見つめていた。

今まで、こんな風に意見してくれる人は周りにいなくて、そのことが新鮮だった。

今思えば、この瞬間に私は恋をしたのかもしれない。