お見合いの場所は都内のホテル。
約束の時間より1時間も早く着いた私は、待ち合わせしたロビーの片隅から様子を覗っていた。

20分後、男性登場。
早いな。と思った。

まだ約束の時間まで40分もある。

コーヒーを注文し、フーと深い息を吐くのが聞こえた気がする。

仕立ての良さそうなスーツを着た長身の男性。
鼻筋が通って彫りの深い顔立ちは、すこし日本人離れした印象さえ受ける。

「素敵な人」
つい、口をついて出た。

でも、表情はなぜだか硬い。
真一文字に結んだ口。
落ちつきなく視線を動かす様子からは、楽しそうな感じはない。

きっと、仕方なくここに来たんだわ。
神谷のおじさまは銀行の支店長。
それなりに力も持っているだろうから、断れなかったのかもしれない。


時間ギリギリまで観察し、私は男性の元へ向かった。