社会人になって2ヶ月ほどたった頃、たまたま家に来ていた神谷のおじさまに会った。
パパとは40年来の友人で、私も小さな頃からかわいがってもらっていた人。

「爽子ちゃん綺麗になったねえ」
「ヤダ。おじさまったら」

上機嫌のおじさまにお酌をしながら、仕事の話や、パパの愚痴を面白おかしく話していると、

「そうだ爽子ちゃんにいい相手がいるんだ」
えっ。
いい相手って?
ポカンとする私に

「もしかして、爽子ちゃん彼氏いるのか?」
唐突に聞かれ、
「いません」
思いっきり否定した。

「じゃあ、1度会ってみなさい。いい若者なんだ。人柄はおじさんが保証するから」
「えー、でも・・・」

いくら結婚にあこがれがあっても、お見合いしてまで結婚したいとは思わない。
せめていくつかの恋を経験してみたい。

「そんなに深く考えなくてもいい。友達の紹介くらいのつもりで会ってみなさい」
お酒のせいか、その日のおじさまは押しが強く、結局押し切られてしまった。

一緒に飲んでいたパパも止めようとはしなかった。