天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース

「今は仕事の事なんて考えないでください。泰介さんは事故に遭ったんですよ。1つ間違えば、大怪我をしていたかもしれないんです」

確かにそうなんだが、
「幸い僕は元気だ。そうなれば、仕事の遅れも気になるし、会社のことだって心配になる。会社をやっている以上、色んな責任があるんだよ」
つい、説教じみた口調になってしまった。

「それって、運良く軽い事故ですんだからですよね。泰介さんに何かあれば、そんなことは言っていられなかったはずです。仕事が気になるのはわかりますけれど、今はまず大きな怪我でなかったことに感謝してちゃんと休んでください」

普段の爽子さんからは想像もできない強い言葉に、俺は黙り込んでしまった。

確かに、爽子さんの言う通りかもしれない。
事故の状況を聞くと、かなりの事故だったらしい。
俺の車も相手の車もほぼ廃車状態で、ここまで軽症なのが奇跡だと言われた。
もし、もしも俺が事故で命をなくしていれば当然仕事どころではなかった。
命があること。
怪我なくすんだこと。
まずは、そのことに感謝しよう。

「お願いですから今夜一晩だけ、仕事のことは考えずに休んでください。事故の痛みって、後になってから出てくるんです」
まるで経験者のような発言。

「事故に遭ったことがあるの？」
つい聞いてしまった。

「えっ」
一瞬、爽子さんが困った顔になった。