「すみません。ありがとうございます」
次に聞こえてきたのは若い女性の声。
ん?
この声は、

「泰介さん。大丈夫ですか?」
今にも泣き出しそうな爽子さん。

「う、うん。大丈夫」
でも、なぜ爽子さんが・・・

「携帯の着信履歴から私に連絡があったんです。会社にも連絡をしておきました。後で副社長さんが見えるそうです。それまでは頼むとお願いされました」
一颯の奴、余計なことを。

ゆっくりと体を起こそうとする俺を
「ダメです。まだ休んでいてください」
爽子さんの厳しい声。

いや、でも、
「心配しなくても、本当に大丈夫だから」
「ダメです。2時間以上意識がなかったんですよ。ちゃんと診てもらってからでないと、動いたらいけません」
さっきまでは泣きそうな顔をしていたくせに、今は怒っている。

「おやおや、病院で喧嘩はいけませんよ」
点滴を外しに来た看護師が笑っている。
「「すみません」」
俺と爽子さんの声が重なった。