「俺はてっきり、泰介はまだ夏輝が好きなんだと思っていた」
「そんなわけあるか」

あれから6年。
別れた彼女を思い続けるには長すぎる。

「時々会っているんだろう?」
「まあな。友達だし。帰ってきた時には飲みに出ることもある」
元々、嫌いで別れたわけではないし。

「一旦別れたカップルに友達関係は成立しないと思うけれどな」
いかにもプレイボーイな一颯らしい台詞だ。

「お前どんな恋愛してきたんだよ。少なくとも、俺と夏輝はいい友達だ」
「ふーん」
疑わしいって顔をしている。

「どっちにしても、お見合い相手のお嬢様は初めてのタイプだって事だ」
「まあな」
そうかもしれない。
「しばらくつきあってみろよ。案外いいかもしれないぞ」
ククク。
一颯が腹を抱えている。
「お前、面白がっているだろう」
「当たり前だ。お前のそんな顔滅多にに見れないじゃないか」
悪びれる風もなく言う一颯。

俺の10年来の親友は楽しそうに笑い転げている。