「高杉建設と言えば、日本の優良企業だぞ。都心にでっかい自社ビルを構えて、経営自体も安定している。それもここ４０年でここまで大きくなったんだ。すべては高杉健太郎の腕１本でここまで来た。とにかくすごい人だぞ」
興奮気味に語る一颯。

そんなこと言われなくたってわかっている。
俺だって起業家の端くれだ。
若くして会社を興そうとする人間で高杉健太郎を知らない奴はいない。
あこがれて、崇拝する奴も数知れない。

「高杉健太郎くらい誠実に、真っ正直に商売ができて、それで会社が大きくなれば本望だ」
「そうだな」
確かにそう思う。

「えらい人と見合いをしたもんだな」
ふん。
わかってるよ。
「俺の事前調査が甘かったんだ」
まさか、そんなお嬢さまを紹介されるなんて思ってもみなかった。

「いいじゃないか。逆玉だぞ」
「一颯、お前・・・」
睨んでしまった。