パタン。
ドアが開き、タキシード姿の泰介。
うーん、やっぱり素敵だなあ。

「せっかく作っても、あまり着る機会がないと思うんだけれど・・・」
照れながら、鏡を見ている。

「すごく素敵よ。とっておけば、いつか着ることもあるわよ」
「そうかなあ」

記念にと2人そろって写真を撮ってもらい、少し気分も上がってきた。
泰介もまんざらではないようで、スタッフと談笑している。

「靴と、タイと、小物もそろえさせていただきましたが」
よろしかったですかと、私を見ているマネージャーさん。

「はい、結構です」

「支払いは?」
泰介がスタッフに声をかける。

「もう済ませました」
答えた私に、
「どういうこと?」

あれ、泰介の顔が険しくなっていく。