「泰介も夏輝さんに会っていたのよね」
うっすらと目に涙をためて、爽子が詰め寄る。

「それは仕事で」
「それだけ？」

確かに、何度か会った。
仕事だと言い訳をして、会っていた。

ああ、結局俺のしたことも同じだ。
爽子から見れば、夏輝と俺が会っていたことだって面白いはずがないんだから。


「あら、爽子？」
突然、後方から声がかかった。

「ママ」
「泰介さんも一緒なの？」
「あ、はい」
慌てて頭を下げた。

こんな家の前で立ち話をしていれば、目につくのは分かったことだったのに。
うかつだった。

「由梨ちゃんの所に行ったんじゃなかったの？」
「うん。由梨のマンションに泊ったんだけれど・・・」

「すみません。話があって、朝早くから押しかけたんです」
俺が言い訳するけれど、
「ふーん」
お母さんは疑っている。

「泰介さん、良かったら上げって行きなさい。朝食まだでしょ？」
「いえ、こんな時間ですし。また伺います。爽子、じゃあ」
「うん」

結局、中途半端。
俺たちの関係修復はできないまま終わった。