短い沈黙の時間。


「やっぱり知り合いだったんだな」
爽子に尋ねた。

会社のロビーで話す2人を見て、初対面ではない気がしていた。
しかし、爽子が違うというならそれでいいと自分を納得させていた。
気にはなっていたんだ。
それでも黙っていた。

「説明しろ」
一颯に迫る。

さあ、はっきりと答えてもらおう。
いくら一颯が相手でも、爽子のこととなれば俺も黙ってはいない。

はぁ。
軽く息をついた一颯。

「過去に1度一緒に飲んだだけだ。泰介、お前だって経験あるだろ」
何をそんなに怒るんだと言っている。

ふざけるな。
そんな言葉では納得できない。

お前が今まで相手にしてきた一夜限りの女と、爽子を一緒にするな。
お前にだってそんな相手がいただろうって言う態度にも腹が立つ。

「一颯、やめろ」
「泰介も落ち着け。お前らしくないぞ」
さすがに、有樹が止めに入った。

睨み続ける俺。
何食わぬ顔でグラスを空ける一颯。
うつむき、小さくなっている爽子。

張り詰めた時間が過ぎる中、次に動いたのは爽子。

突然、バックを手に立ち上がると店の入り口に駆け出した。
逃げ出したというのが近いのかもしれない。

「あっ、待って」
アルバイトの司が、爽子に声をかける。
しかし、爽子は出て行った。

俺は爽子を追いかけようとした。

しかし、
「泰介っ」
いつもより鋭い有樹の声が俺を止めた