「こころ、大きくなったわね」

先月誕生日を迎えたばかりのこころは、1歳の女の子。
よちよち歩きができるようになって、かわいいけれど目が離せない。

「最近ますます爽子に似てきたわ」
「そう?」

確かに、目元口元はうちの家系。
であれば私に似ていても不思議ではない。

「喜一もね、まるで爽子を育てているみたいだって言ってる」
「そんな・・・」

「あなたも早く結婚しなさい」

「まだいいわ」
私が親なんて想像できない。

「彼のことを好きなんでしょ」
「う、うん」

多分そうだと思う。
でなかったらこんなに悩んでいない。

きっと今頃、泰介は一颯さんから事情を聞いているだろう。
軽蔑されるかな。
隠し事をしていた私を許してくれないかもしれない。

「どちらにしても、一度きちんと話をすることね」
「うん」
わかってる。

「それにしても、あなたが恋の悩みを持つようになるとはね」
「何よ、それ」
馬鹿にしている。

「喜一が聞いたら腰抜かすわ」
ったく、いつまでたっても子供扱い。

「喜一にとっても、お父様とお母様にとっても、爽子は特別なのよ。かわいくて仕方がないの」
「はあ、それはどうも」
年頃の女子としては、素直に喜べない。

いつの間にか、こころは由梨の腕の中で眠ってしまった。
うーん、かわいい。

私もいつかこんな子を抱く日が来るのかな。
想像できない。