「そんなに気にすることないと思うわよ」
「え?」
「だから、生きていればいろんなことがあると思うのよ。恥ずかしいことだって、人に言えないことだって、1つや2つじゃない。そんなものなんじゃないの」
随分と大人の発言。

「まぁそれはそうだけど」
いざ当事者になれば簡単に割り切れるものではない。

その時、

「ウワァ〜ン」
廊下の奥から鳴き声が聞こえてきた。

「あら、こころが起きちゃったみたい」
由梨が鳴き声の方へ向かって行く。


子供はかわいいけれど、子育てって大変。
あのおしゃれだった由梨が、ネイルをしなくなったし、ヒールの靴をはくこともなくなった。
世間から見ればお兄ちゃんはイクメンの部類に入るんだと思う。
よく手伝っているし、由梨を大切にしている。
それでも、結局子育ては女性にかかる負担があまりにも多い。


「あーぁ、すっかり起きちゃった」
肩を落とした由梨が、こころを抱いて戻ってきた。