「やっぱり知り合いだったんだな」
私に向けられる言葉にいつもの優しさはない。

うすうす、泰介は気づいていた。
それでも黙っていたんだ。

「説明しろ」
黙ったままの一颯さんに迫る。

「過去に1度一緒に飲んだだけだ。泰介、お前だって経験あるだろ」
何を怒っているんだと、かわす。

しかし、そんなことで泰介が納得できるはずもない。

「一颯、やめろ」
有樹さんが止めに入る。


「・・・」
「・・・」
「・・・」

沈黙がこんなにもいたたまれないものだと、初めて知った。
みんな何も言葉を発しないまま、泰介が一颯さんをにらんでいる。

今この事態の原因は私。
全て私が悪いんだ。

「泰介も落ち着け。お前らしくないぞ」
有樹さんが言ってくれるけれど、
泰介は返事もしない。

いつも温厚で、優しい泰介。
一颯さんとも10年来の親友。
それなのに・・・

次の瞬間、私はバックを手に入り口に向かって走っていた。

後から
「あっ、待って」
「泰介っ」
有樹さんと司くんの声が聞こえたけれど、私は止まらない。

そして、泰介が追いかけてくることもなかった。