その日、俺は生まれて初めて人の目を気にする事も誰かに邪魔される事もなく一日を終えた。柏崎さんにも手を加えたのは俺だとバレた時に虐められないためか、俺だとバレる可能性を避けるためか。どちらにしろ、お祭りほど楽しめない物はなかったからとても嬉しかった。
焼きそばを買ったり、甘い物を食べたり。こんなに人で賑わっている場所で、誰かと普通に過ごせたのは初めてだった。その相手が柏崎さんだったから、尚更嬉しかったんだと思う。
まるでおとぎ話のようだった。まぁ、柏崎さんが無防備にも食べ掛けを一口どうぞなんて言う物だから、ドキドキしすぎて俺が倒れそうになったけど。それでも初めてお祭りも悪くないなって、そう思えた。
あの男たちには感謝しないといけないな。きっと、察しの良い彼女に頼まれてやってくれた事なんだろう。彼女はちゃんと、心を知った上で皆に愛されているんだろう。俺とは住む世界が違う。