当時の私はまだ泣くのが仕事の赤ん坊。喋れもしないのに嵌められる訳もなかった。父は母の持ち掛けた話を断った。でも、誰かの“家族”という存在が欲しかった母は父が無理ならと私を連れ去った。保育園から無断で連れ去ったらしい。
ハルくんと結華お姉ちゃんの両親が母を見付けてくれたのは私を抱えて電車を待っていた時だった。丁度電車を降りた時、違和感を持ったお二人が母にお久し振りですと声を掛けてくれたらしい。
私が今も父のそばにいられるのはハルくんと結華お姉ちゃんの両親がいてくれたから。私が明るくなれたのは結華お姉ちゃんがいたから。簡単に諦めない気持ちを持てたのはハルくんがいたから。私はハルくん家族に恩しか受けていないんだ。頭が上がらないんだ。

「一緒に頭を下げに行こう」

「だね。感謝しなきゃ」