悔しくて、やりきれなくて。 ぎゅっと握った拳に力を込めると、それに気がついた母さんがそっと手に触れた。 やめなさい、の合図だ。 ここにいる動物の中には、悲しいことに虐待をされてきた子たちもいる。 確かに怖がらせてはいけないから、ゆっくりと手を解いた。 びしょ濡れだった彼女には、バスタオルと母さんの洋服を貸した。 申し訳ないだなんだと言う彼女は、本当に壊れそうで。 いいから、と押し切った俺の顔を見て、ありがとうございますと言いながら困ったように笑った。