期待と不安の両方を胸に抱きながらくぐった校門。



今日から私はずっと憧れだった高校に入学する。




中学校からの友達は誰もいなくて、本当にこれこそひとりぼっち。






「あはは、でさ〜、この前ね?」






「あー、あれね!」







入学式が終わり教室に入れば、楽しそうな会話。なんか入れそうにないや……。







「ねぇ、どこ中出身なの?」







そんなことを思っていたとき、ふとかけられた声。驚いて顔を上げると、ツインテールのふんわりとした可愛い女の子が。







「あ、えっと、南中です。」






「南中?もしかして近くにバスケットコートあるところ?」






「うん。」







「嘘、私東中なの!近いね!」







東中といえば、南中との距離がとても近い。今までこの子を見かけなかったことが不思議なくらい、よく東中の人たちとは会っていたのだ。







「近いですね!あの、同じ中学校出身の子っていますか?」






「ううん、いないの。東中は私1人。南中は?」






「私も1人です。」






「あ、ほんと?なら友達になろ!私めっちゃ1人で不安だったんだ〜!」






「ぜひ、私でよければ!!」







「よろしくね!私、中村希空(なかむら のあ)!それと、敬語じゃなくていいから!」






「はい、じゃなくて、うん!私、倉森愛唯(くらもり あゆ)!これからよろしく!」






「愛唯ね!ふふ、よかった〜友達できて!」






「私も、友達できて一安心してる!」






ニッコリと笑う希空ちゃんに、私もニッコリと笑い返せば、希空ちゃんにギューッと
抱きつかれた。







「愛唯可愛い〜!ね、ぜったい彼氏いるでしょ?!」






「え、え、彼氏!?いないよ!!」






「嘘だ〜、ほんとはいるでしょ??」







「ほんとにいないの!私、恋愛に疎いみたいで…未だにちゃんとした初恋まだなの。」







「えぇ!愛唯もったいない!せっかく可愛いのに!」






「希空ちゃんはいるの?」







「ん、まあ、一応。」








少し苦い顔をした希空ちゃん。彼氏さんと上手くいってないのかな?







「私ね、その人と中3の修学旅行から付き合ってて…まあ、まだ1年経ってないんだけどね。」







上手くいってないのかと思ったことが、顔に出ていたみたいで希空ちゃんは話してくれる。








「高校バラバラになっちゃって、その彼サッカーしててすごくモテるから…すぐ別れちゃうんじゃないかって不安なの。」






「学校離れると不安だよね…。」






今まで同じ学校で多くの時間を過ごしてきて、お互い目の届くところにいた2人が、突然お互いの目が届かないところに離れてしまえば不安になるのも無理はなかった。




「ま、悩んでて仕方ないから、私は彼を信じて過ごすしかないんだけどね!」







「そうだね!」







明るく笑った希空ちゃんはキラキラしていて、恋する乙女はこんなに可愛いんだって実感した。私もいつか希空ちゃんみたいに恋したいな……。





「高校で出会えるといいね、素敵な人と!」





「うん…出会えるかな?」






「きっと出会えるよ!」






希空ちゃんの笑顔につられて、私も笑った。いい人と出会えたらいいな、恋ができたらいいなって。