顔を赤くした加藤を見て、ギリっと、奥歯をかんだ。



俺、宮野翔、32才。
小さい頃から、クラスで1番のちびで
今までずっとちびだ。いつか、背が伸びると信じてたのに、165センチ(実際には164.3センチ)にしか、なれなかった。

でも、今、気になる女が。
2年前に、病棟担当になった薬剤師の加藤だ。
患者さんとすぐ仲良くなり、指導という名の雑談。でも、その雑談が患者さんには、必要だ。
医者も看護師も忙しくしていて、ゆっくり患者さんの話を聞いてあげることが難しい。でも、加藤は、ゆっくり話を聞いて、患者さんの小さな訴えを落とさない。
そして、ちゃんと他のスタッフに伝えてくる。
患者さんにもスタッフにもありがたい存在なのだ。

気になる存在ではあるが、あいつの中では俺は対象外。
飲み会の席で酔っぱらった加藤が言ってた「180センチ以下はない。」と。
からかったり、ちょっかいは出せても、それまでだ。

そしてあいつは、きっと同期の山形が好きなんだ。
山形は背も高いし、王子様イケメンだ。俺では勝てない。